2022年11月8日に発売された『 ソニックフロンティア 』。開放的なオープンゾーンの空間を、ソニックが疾走する。
美しい草原を駆け抜けるスピード感、気持ちいいリズムで配置されたギミック、古代遺跡と謎めいた少女、エリアの最後に待ち受ける超巨大なボス。これまでの『 ソニック 』が持っていた魅力を残しながら、ゲーム性はさらに広がり、深まっている。
3Dソニックの新機軸となった本作は発売から高い評価を受け、世界累計販売本数は350万本を突破(※)、東京ゲームショウ2023で発表された日本ゲーム大賞では優秀賞を受賞した。
「新しいソニックを生み出す」。ゲームのトップキャラクター、トップブランドのひとつであるソニックの魅力を受け継ぎながら、新生させた。新しい遊びを作り出すには産みの苦しみもあったというが、その苦労が販売本数と高い評価にあらわれている格好だ。
そんな本作『ソニックフロンティア』の最終無料アップデートが2023年9月末に実施。新たに島(フィールド)がひとつ増えたかのような大ボリュームで、さらに強くなった敵やボスが待ち受けている。
『ソニックフロンティア』は何を開拓したのか。そして無料大型ダウンロードコンテンツ“超・完全決戦”はいかにして生み出されたのか。のっけから数字の話もしつつ、ディレクターとプロデューサーに訊く。
※数字はセガ発表。
岸本守央 氏(きしもと もりお)
セガ ディレクター(文中は岸本)
業務用ビデオゲーム開発を経てソニックチームへ。Wii向けにリリースされた『ソニックと秘密のリング』以降、数々の『ソニック』シリーズのタイトルを手掛ける。
川村幸子 氏(かわむら さちこ)
セガ プロデューサー(文中は川村)
長らくソニックチームに在籍しているアーティスト。ドリームキャストの『ソニックアドベンチャー』ではチャオのデザインを担当した。『ソニックフロンティア』が初のプロデュース作品となる。
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――『ソニックフロンティア』、世界で350万本ということで……売れてますね。
川村いやあ、正直に言うともっともっと行きたい。行けるはずだと思っています。
――おおっ。
岸本『ソニックフロンティア』は発売4週間で250万本の販売を達成しました。
『ソニック』シリーズだと、累積で250万本を達成することは珍しいことではないんですが、4週間という短期間で到達するのは最速レベルの記録です。
これは発売後すぐにパッケージを手に取ってくれた方が多かったということでもあると思いますし、そういうふうになればいいと思って作っていたので、素直にうれしいですね。
川村これまでの作品とは違う数字の伸びかたをしていますし、『ソニック』は長く売れるタイトルでもありますので、350万本という数字は決してソニックにとっては大きくはないと思います。
――まだまだ伸びるポテンシャルがあるぞ、という。
川村はい。まだ触ったことがない人に対して1年前のゲームをお勧めするのは難しいのですが、アップデートが定期的にあったことで『ソニックフロンティア』を話題にしてくれているプレイヤーも多いですし、“超・完全決戦”も配信になったばかりで遊ぶチャンスだと思っていますので、ぜひ。
――『ソニック』シリーズはもともと日本よりも北米や欧州で多く遊ばれているタイトルですが、本作ではどうだったのでしょう?
川村そのあたりはご理解の通りで、本作でも北米欧州地域のほうが売上は大きいです。ですが、今回は改めて日本で『ソニック』を売っていくための戦略を立て、ゲームそのものもそれを狙って作っていました。
そういうこともあり、現時点で国内での販売本数が前作の3.5倍ぐらいになっています。
――3.5倍!?
川村元の数字がそこまで大きなものではないということはありますが(苦笑)、実際に日本のプレイヤー、とくにこれまで『ソニック』に興味がなかった方にも遊んでいただけたのかなと思います。
岸本日本のゲームファンにも訴えかけられるゲームにしたいというのも『ソニックフロンティア』のひとつの目標でした。
PR面でのアプローチもゲームのコンセプトを汲んで宣伝してくれたので川村プロデューサーにはすごく感謝しています。欧米だけではなく、始めから日本も視野に入れたゲームデザインを作っていくことで、実際に日本の売り上げを伸ばせることが証明できて、大きな一歩だと思っています。
――日本ゲーム大賞の優秀賞受賞というのも国内のゲームファンにしっかりと届いたからこそだと思います。そのほかには目指していた目標というのはあったのでしょうか。
岸本ソニックチームがメインストリームの『ソニック』タイトル最新作を世に提案するとき、私がディレクションする作品では「最新作がベストのソニックゲームである」ということをずっと思いながら作ってきました。
本作ではそれだけではなくてさらに、日本も含めた世界中のアクションゲームを愛するゲームファンに響かせることができるのか、それを図りたい、響かせたい……そういう目標がありました。そういう意味ではこの反響はありがたいことです。
――逆に達成できなかったことはありましたか?
岸本無料アップデート第1弾、第2弾と『ソニックフロンティア』をもっと楽しめるようなものを提案してきて、第3弾にいたってはもうオープンゾーンをひとつ丸ごと、最大のやつを、さらにラスボスまでまた作っちゃった。
これはプレイヤーの皆さんとの協力もあってのことで、発売後に私が想像していたよりもはるかにすごいアップデートになったと考えています。
でも、まだ買っていない方はこれをどう見ているのか、何が足りないのか、買っていただけていない方にはなぜ響かなかったか。
――“超・完全決戦”は実際すごいボリュームですよね。無料なのに。
岸本がむしゃらに作ったので粗削りな部分があるというのは自覚しているんですけど、ゲーム大賞の優秀賞、もしくは最終アップデートの評判を切っ掛けにでもまだ遊んでいない皆さん手に取っていただいて、「ここが足りない、ここをもっと洗練させなきゃダメ」とかメッセージをいただきたいなと。
まだ道なかばだと思っているので、世界中のゲームファンにアプローチをして、なぜプレイしていただけないのか、魅力を感じないのか、というのは今回できなかったこととして、さらにこのビジョンを押し進めていきたいと思っています。
――まだ『ソニック』を遊んでいない人に、もっともっと遊んでほしいと。
岸本ゲームファンに訴求できるものを考えたときに、何が足りなかったのか。『
――本音!
岸本私としては、なりふり構わずあらゆる手を尽くして、そこに『ソニック』というゲームで入り込みたい。それができるキャラクターだし、タイトルだと思っています。
ソニックをソニックが好きな人だけが楽しむものではないものにできると思っています。『ソニックフロンティア』ではそれに挑戦し、一定の反響はいただけましたけど、それでもまだ響かない部分があるならば、それに対して何か気づきが欲しいんですね。
――先ほど川村さんがおっしゃっていた。「まだまだいける」というところにも通じますね。もっと多くの人に知ってもらって遊んでもらいたいという。川村さんはいかがでしょうか。
川村「日本で売りたい」というのは開発当初から達成したいと思っていましたので、日本の数字を伸ばせたのはよかったです。
それをどうやって達成しようとしていたかというと、“『ソニック』を進化させる”というテーマがありました。ずっと定番化した『ソニック』を作ってきたがゆえの閉塞感みたいなものを感じていて「ここで変えなきゃ!」と。
開発時は大きな生みの苦しみもありましたが、私達の提案する“進化した次世代のソニック”をソニックファンは受け入れてくれましたし、ファンではなかった方が遊んでもくれました。ここがいちばん達成できたことだと思っています。
達成できなかったことが何かと言われれば、先ほどの「もっと行けたぞ!」というところですね(笑)。
――「もっとこういったアプローチをしたらよかったかも」という思いはありますか?
川村あります……たくさん(笑)。
初めてプロデューサーをやって、何ができるのか、何をすべきなのか、手探り状態だったので、そういう意味で、「もしつぎがあればもっとうまくやれるのにな」と思うことはあります。
――具体的にはどのような?
川村どういう売りかたをしていきたいか、誰に訴求したいのかというところを日本のPRの方とはかなり密にやり取りができたんですが、欧米独自のセオリーというのはやはりあるので、そのあたりにもっと踏み込んでいければよかったなと。
――欧米での売りかたに対しても、自分の意見をもっと全面に押し出してもよかったのかな? というような。
川村いま思えば、私たちがやりたかった“ソニックファンだけでなくゲームファンにも響かせる”という目標は、日本と欧米での違いはなかったなと思うんです。「欧米は欧米の文化がある」と言われてはいたんですが、もっとゲームファンに向けたアプローチができたなと。
――お話を伺って『ソニックフロンティア』(frontier=開拓)というタイトルが、新しいところに挑戦する、進化するという意味が込められていて、いい題名だなと改めて思いました。タイトルはどのように決まったんでしょうか。
川村ワールドワイドで統一したタイトルにしたいという気持ちは最初からあり、開発チームで案を持ちつつ飯塚(隆)シリーズプロデューサーと話し合いまして、飯塚のほうから「“フロンティア”はどう?」という提案がありました。
飯塚は長くアメリカにいるというのもありまして、想定したニュアンスを英語圏で伝えるにはどういった言葉がいいのか、というのは、かっちり来るものをチョイスしてくれていましたね。
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――約1年にわたって行われた3回のアップデートはどのようなスケジュールで作られていたんでしょうか。
岸本先ほどお話した、発売4週間で250万本の販売を達成したというのは、『ソニック』シリーズでも最速レベルの記録です。その勢いを見て、川村プロデューサーや上層部の判断によりアップデートをしていくことになりました。
発売前からアップデートの計画はあったのですが、当初はハロウィンなど季節的なものをコンパクトにやっていく想定だったんです。ここまで大々的にゲームを進化させる、遊びを豊かにする“攻めのアップデート”をやらせていただけたのは皆さんの応援のおかげだと思っています。
――数字的にも良かったし、遊んだ方の評判もよかったというのが後押しになったと。
岸本はい。
川村『ソニックフロンティア』という新しいタイトルがファンから受け入れられるか、というのが本作の最大の壁だったんですが、受け入れてもらえたという結果が大きかったです。
かつ、ファンコミュニティとの信頼関係はセガが大事にしているものなので、ファンとの密な関係という意味でもアップデートしていくというのは会社も推奨しているところです。
ただ、この規模の無料アップデートを許してもらえたのはかなり大きな判断だと思います。
――実際に遊んで、これが有料DLCじゃなくて無料アップデートなんだという驚きがありました。これだけ大きなアップデートを定期的に行ったのは、ファンの後押しやファンコミュニティをも大事にしていこうという会社の考えかたがあったということですか。
川村そうですね。これからのゲームは売っておしまいではなく、ファンの声に応える形で信頼関係を築いていくべきだよね、という考えがあります。
ゲーム業界はダウンロードしてパッチを当てられる状況になってからどんどん変わっていきました。
家庭用ゲーム作品も運営タイトルのようになっていく傾向があり、そういう状況を見て、『ソニック』はファンコミュニティがとても大きいので、そこに対してどれだけアピールできるかというか、サービスできるかというところも非常に大事にされていますね。
――2023年10月17日には最新作『 ソニックスーパースターズ 』も発売されましたが、これは2本同時に制作が進んでいたということですか?
川村『ソニックスーパースターズ』は協力会社のアーゼストさんで作っているので社内のラインではなかったんです。
ですが、私の恩師でありソニックのデザインの生みの親である大島(直人)さんがいる会社で、大島さんと飯塚(隆)シリーズプロデューサーの強力なタッグで制作されています。
――最近の『ソニック』は1年に1本くらいのペースで新作が出ていますよね。それは先程のコミュニティへのリテンションという意味合いもあるのでしょうか。
川村ここ数年は実写映画も公開されたり、以前よりも会社としてソニックというIP(知的財産)に力を入れていこうという機運はかなり高まっています。
去年と今年の東京ゲームショウのセガブースを見てもらえればわかりやすいのですが、ものすごくソニックに力を入れています。そういった流れでタイトルの本数やラインナップも充実させてどんどん盛り上げていこう、という会社的な意向があります。
――さすがに、1年1本くらいの発売ペースが今後も続くということではないですよね?
川村 1年に1本出していこうっていう『 龍が如く 』みたいな開発はとてもたいへんなことですよね。あれはすごいと思います。
――(笑)。改めて2022年を振り返ってみると、『 ソニックオリジンズ 』と『ソニックフロンティア』は6月と10月での発売だったんですね。
川村『ソニックフロンティア』はソニックの進化という大きなチャレンジを掲げた長期にわたるプロジェクトだったので、開発スタートから発売日が決まるまで、かなり紆余曲折がありました。
なので、スケジュールが変わったのは『ソニックフロンティア』のほうですね(笑)。ただ、そういうチャレンジを「やってごらんよ」と許していただけたので、そういう意味ではすごくありがたいプロジェクトでした。
――2023年9月29日に無料大型アップデート第3弾“超・完全決戦”が配信され、発売から1年弱にわたって行われたアップデートも今回で無事終了となりました。現在のご感想は?
川村長いプロジェクトだったので、今は終わったことにほっとしています。いろいろなチャレンジをして、いろいろな成果が出たタイトルだったなと思います。
私も岸本ディレクターも長く『ソニック』に関わってきましたが、その中でも日本国内のゲームファンからも評価していただいて、みなさんの記憶に残るタイトルになったと思います。そういった強い印象を残せたのが、何作も作ってきてやっとのことだったので。
――それはアップデート部分でとくにそう感じられましたか?
川村そうですね。発売から1年の無償アップデートということ自体がソニックにとって初の試みで、配信のたびに大きな反応もいただいたので、成果を実感できることが多かったなと。
――岸本さんはいかがですか?
岸本発売から3回に渡ってアップデートを実施してきましが、この1年間は本当に楽しかったです。
もちろん製品版を作っているときも楽しい瞬間はあるんですが、アップデートの1年間は楽しいことばかりでした。その代わり製品版を作っているときよりもたいへんだったんですけど(笑)。
「たいへんだったけどめちゃくちゃ楽しかったな」というのが最後のアップデートを終えての感想です。
――開発を通じて楽しかった部分とたいへんだった部分、それぞれお伺いできますか。
岸本アップデートの制作時は、前作『 ソニックフォース 』の中村(俊)プロデューサーが発売に向けたカウントダウンをTwitter(現X)でやっていたんですが、それを見て私もTwitterを始めてみました。
そこでファンの皆さんからいろいろなご感想やご意見、ご要望などいただいて、当初考えていた3回のアップデートに対してお客さん達が期待していることがわかりました。
それに対して私やソニックチームがどう受け取ってアウトプットするか考える、それ自体がこれまでの私のゲームの作りかたとはまったく違ったんです。
日々届いてくるメッセージを受け取りながら、「ああ、そういう見かたやアプローチ、発想があるんだ」と導いていただきながら、我々はそれをどう解釈して『ソニックフロンティア』のアップデートとして出していくか。そして、それによってゲームがどんどん進化していくという様子を見ていて。
本編の制作ではひたすら生みの苦しみだったんですけど、今度は生まれたものを育てる喜びみたいな感じで「こんなにおもしろくなっちゃった!」みたいな驚きもあり、とても楽しかったですね……楽しかった。
――(笑)。たいへんだったことは?
岸本当初の想定ではアップデートってもうちょっと小規模なものだったんです。
もともと想定していた内容も決してほかのタイトルに劣るものではないのですが、皆さんの感想やご意見がとても魅力的だったので、私が「これをやったら絶対おもしろくなるよね!」と現場にたくさん相談してしまって。
そして、その結果自分で自分の首を絞めるというか……想定以上の大作に(笑)。
「最初はそこまでやる計画ではなかったでしょ、岸本さん!?」っていう悲鳴も現場から上がっていたんですが、オープンゾーンのポテンシャルはまだまだあるし、「これは試行錯誤じゃなくて、やったら絶対におもしろくなるからやろうよ」という感じで決めていきました。
すると現場のみんなも「やるか……!」と前向きになってくれたので、本当にしんどいけど充実した1年でした。
――川村さんはプロデューサー的な立場でブレーキを掛けることはなかったんでしょうか?
川村いっさいないです(断言)。
――力強い。
川村なので、いま岸本ディレクターが言った「やりすぎちゃいました」というのを、「最初から計画通りだって言え」って言っています(笑)。
お客様の声を聴いて、ファンとゲームでコミュニケーションを取るという形を取ったのでそれを止める理由はなかったんです。止めることはないんですけど、対外的には「計画通りです!」と言ってほしいなと!
――なるほど(笑)。
岸本たいへんなところはありましたが、ただ、大前提として締め切りは絶対守る。それはもうプロとしてあまりに当たり前すぎますが、絶対にそうしたんですね。
――ああ、物量は当初の想定よりも増えたけれども、あくまで岸本さんの中で計算を立てた作業量の範囲内で、最大限まで膨らんでいったと。
岸本そうですね、たとえばアップデート配信の時期をずらしてまで膨らますっていう考えは私にはないんです。
ただ、ソニックチームや私がもうひとがんばりすればできることに関しては「予定してないかったけどやろうよ」というふうに鼓舞していったということでして、決して行き当たりばったりでやれるとこまでやるとか、そういうものではありません。
川村「開発期間を延ばしてほしい」みたいな相談はなかったです。キャパシティーの中でどうやりくりするか、というところを考えてやってもらっていますから。それでも開発スタッフ一同、想定以上にがんばっていただきました。
――プロデューサー的にもそこはブレーキをかけることはなくて、後押しして。
川村そうですね、見守るっていう状態でした。
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――続いて、最後のアップデート“超・完全決戦”についてお聞きしていきます。新シナリオ、プレイアプルキャラクターの増加など、最後にして最大の内容ですが、まず、開発するにあたってのテーマやコンセプトはどのように設定されて作られたんでしょうか?
岸本当初は製品版を買っていただいた方への恩返しというか、感謝の気持ちを表すぐらいで考えていたんですが、気づいたら「今度のアプデは、製品版『ソニックフロンティア』をライバルに設定しよう」ということになりました。
――強力なライバル設定ですね。
岸本そして、ソニックチームが1年弱『ソニックフロンティア』をアップデートしていったらここまですごいことになるんだよ、というところを見せようと。
そこには、海外で盛んな“MOD”文化がライバルとして立ち上がっていました。海外のユーザーさんには凄腕の方がいらっしゃって、我々がファンサービスで作ろうと思っていたものが「もう動いてるじゃん……」となっていて(笑)。
――どのようなMODをご覧になったのですか?
岸本ソニック以外のキャラクターがプレイアブルで動いていたり、アップデートでやろうとしていた新アクションがすでに動いていたりとか。すごいことになっているなと(笑)。
そうしたら、その内容をソニックチームがアップデートとして出すわけにはいかないですよね。お客さんたちがそこまで来るなら、我々はさらに期待を超えて予想を裏切りに行く。その結果、「製品版がライバルじゃない?」ということになりました。
――“超・完全決戦”は難易度がかなり高いように感じますが、これは意図して難しく作られたんですか?
岸本そうですね。基本的に“超・最終決戦”は本編をクリアーしたうえでその後に遊ぶことを想定していて、追加シナリオの入り口にもメッセージが出てきます。
岸本また、『ソニックフロンティア』はソニックシリーズで初めて難易度選択(エンジョイ、カジュアル、スリル)を入れたので、どれを選んでもなんの不利もないのでいちばん自分が楽しめる難易度で遊んでいただければと思います。
――敵との戦闘だけではなく探索時のフィールドもかなり変わりますからね。
岸本ですね。ただ、『ソニックフロンティア』は今回が『ソニック』デビューだったというお客様が想定以上にいらっしゃって、SNSなどで皆さんからのご意見を見ると、もう少し初心者にもやさしい難易度を用意するべきだったかなという思いはあります……。
――塔の試練は何度か失敗すると制限時間が伸びたりはしていますよね。
岸本そうなんですよ。試練は失敗を繰り返すと自動的に2段階やさしくなるようになっています。6回ずつ難易度が下がるんですが、12回失敗したときに13回目のプレイからもっともやさしい状態になります。
ただ、もしかしたら12回プレイする前に心が折れてしまっているお客様もいるかもしれませんし、13回目のプレイでも難しいと感じているのかもしれません。もう少し下げるべきだったなと。
――“超・完全決戦”の攻略に苦戦しているプレイヤーに向けて、岸本さんからアドバイスをいただけないでしょうか? ちなみに僕もまだラスボスを倒せていません……。
岸本基本的に追加シナリオで詰まってしまうところは、敵が固いとか攻撃が苛烈でやられるとかそういう難易度ではありません。それはソニックらしくないと思っていて。
いままでやってきていないので、これもチャレンジだったんですが、“気付き”というのを難易度に組み込んでいるんです。なので、ラスボスも、攻撃方法を気づけばそんなに難しくないんですよ。
――気付き。
岸本フィールドにいる小ボスも強くなっているのですが、気づけばサクッと倒せるようになっていきますよ。塔の試練も、慣れれば慣れるほどに速くクリアーできるようになるので、従来のソニックシリーズのように、速さを競う、タイムを競うように遊んでいただければ。
ですが、小ボスや、謎解きチャレンジ、電脳空間はやらなくても遊べるようになっています。本編もそうですがオープンゾーンなのでいろいろなクリアー方法があるように作っています。
ただ、修行だけは、“修行を経て新しい力を手に入れる”というのをプレイヤーにも体感してほしくて試練の塔はストーリー上必ずクリアーしないといけないようになっているんです。ですから決して死にゲーのようなプレイフィールを目指したわけではないのですが、その思いがちょっと強すぎたかなという反省点はあります……。
――川村さんはプロデューサーの立場からゲーム内容や難易度設定に意見を出すことはありましたか?
川村ぜんぜんしないです。むしろ本編のときよりもしてないですよね。
岸本そうですね。
川村本編のときはお客さんが最終的にどういう反応をしてくれるか分からない状態なので、私レベルの人の感覚も必要と思ってたんですが、本編が出た後でだいたいの反応がわかっている状態なので、そこから先は岸本ディレクターの経験に任せました。
ただ、さっき話に出た海外のMODがすごいというのは知っているので、「ソニックチームとしてこれを超えなければ」という感覚はすごくわかりますし、ちょっとガワを変えただけのキャラクターを出してもファンに驚いてもらえないのは当然だったので、そこは期待通りのものになっていたと思います。
――そこでたとえばエミーだったらカードを使って滑空したり、それぞれ固有のアクションが入っていったということですか。
岸本そうです。我々ソニックチームならではのそのアプローチで、「『ソニックフロンティア』におけるエミーのアクションはこうです」というのを出さなければダメだよねと。
川村プロデューサーが言った通り、見た目だけを変えてソニック同様に操作できますというレベルはもう存在しちゃってるので、それでは皆さんの期待に応えることはできない。
ではどうやってMODを超えて、お客さんの予想を超えて行くかというところで、お客さんとソニックチームの知恵比べみたいな感じですね(笑)。開発時はそういうところも楽しめました。
川村あのエミーが出てきたときに「わぁ、すご~い! さすがプロ!」って思ったんですよ、発言がバカみたいですけど(笑)。エミーにはカードを使ってバイクみたいに走るアクションがあるんですが、ああいったアイデアは簡単に思いつかないなと。
パチンコ マックス 機 ランキング
――最後に、『ソニックフロンティア』路線といいますか、3Dソニックの今後の展開について何か展望はあるでしょうか?
川村具体的なことは言えないのですけど、今回の『ソニックフロンティア』ですごくいいきっかけを作ったのは間違いないと思っています。
ソニックがつぎの世代に進化して、これが第一歩だというふうに私も岸本ディレクターも思っています。『ソニックスーパースターズ』のような2D路線もとてもいいタイトルですが、3Dの方も盛り上げていろいろなタイトルを作っていくことになると思いますので、ご期待ください。
――ありがとうございます。岸本さんはいかがでしょうか。
岸本これまでと違う新しいビジョンの第一歩を世界に提案したのが『ソニックフロンティア』なので、これを受けて、もっとそのビジョンに近づくためのソニックゲームに挑戦していきたいですね。
最終的には世界のトップスタジオに対して挑戦して、私たちソニックチームが結果を出せるのか、成果を出せるのか。さらにもっと攻めたいなと思います。
――熱いお言葉、ありがとうございました!